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「待たせてごめん」
ドアを開けそう言った時には既に美咲の手には何もなく、それどころか「あっ、ううん」ぎこちない返事を返してくる。
「はい、これ。帰って食えよ」
美咲の膝に置きながら俺は軽く視線を後部座席へと送った。
あぁ、なるほど。
見た瞬間に分かった。
病院に行ってそのままにしていた領収書を美咲は見たんだろうと。
だからと言って別に見られて困るようなものでもない。
「ありがとう…」
「ちゃんと食えよ」
「うん」
自棄に素直に頷いた美咲に頬が少し緩む。
俯いて箱を抱える美咲に正直俺は何がしたいのかも分からなかった。
俺が助けてやる。って、そう口にしたのにも係わらず、結局は俺の自己満足で終わりそうで。
助けるって、結局どういう事なのかも分からず。
これ以上、こいつに深くのめり込んでも俺に得るものもなく、更に恋愛感情以上の物を求めるつもりもない。
だけど、そう思っていても何故か美咲に惹かれる部分がある。
俺に逢着し過ぎず、あっさりとしたこの性格に俺は自分自身の本来の落ち着きが心を癒してるんだと。
「あっ、ここ!!」
暫く走ってそう慌てて口を開いた美咲に、俺の意識が我に返ったかのようにハッとし、車を停める。
車の窓から家を見上げる様に見つめてる美咲に、
「みぃちゃんって新山って言うんだ」
そう言って同じように視線を家に向け表札に目を向けた。