Domain
「もしかして仕事中?」
「いや、終わったけど」
「そっか」
「…元気にしてたか?」
「うん元気だよ」
「そう良かった。ちゃんと学校に行ってんのかよ」
「行ってる。あたし真面目だし」
「よく言うわ。全然見えねーし」
思わず鼻で素っ気なく笑うと、「もう!!」美咲のツンとした口調が聞こえ、更に笑みが漏れた。
「まぁ…ちゃんと行けよ」
「だから行ってるって!それにもうすぐ夏休みだし」
「あー…もうそんな時期か。俺にもそんな頃あったなー…ってもう8年も昔の事だけど」
「えっ、そんなに?」
「だって中卒だし」
「あー、そっか」
「で、何すんの?夏休み」
「バイト三昧ってとこかな。もう始めてるよ」
「マジでやってんのかよ」
「だからやるって言ったじゃん」
「言ってたけど、バイト三昧って。ある意味すげーわ」
「なんで?」
「働きすぎ」
「そんな事、翔に言われたくないけど」
「まー、俺は男だからなー…」
「え、なに?意味わかんない」
「分かんなくていいっつーの」
「なにそれ」
美咲のその声に、何故か呆気ない笑みが漏れた。
こんなに働く意味なんか俺にも分からねぇっつーの。
自分の生活の為?お袋の償い?何かの寂しさを紛らわす為にか?
そんなの分かんねーし。
だけどそんな事より俺は、美咲の口から″バイト″と言うフレーズに安堵したのは言うまでもなかった。