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会えば本当に仕事に支障が出そうで、会えずにいた。
他の女とは違う。
他の女なら、会ってそれで終わり。
まだ帰りたくないってダダをこねられても、優しい言葉で今度に回す。
だけど美咲は違う。
まず会った所で、帰りたくないなんて言わないだろう。
ダダをこねる事も、わがままな言葉も一切発しないだろう。
それを分からせるのが電話だった。
アイツから一度も掛かってきたことなんかない。
だから俺から掛けねぇと、ほんとに美咲との関係が無くなりそうで、つい何日かおきに掛けてしまう。
「…って、関係ってなんだよ」
思わず吐き出された声とともに、ベッドにうな垂れる。
自分が自分じゃないように馬鹿らしくなる。
アイツに対しての扱い方がいまいちよく分かんねぇわ。
ほんと、流星が言うように、俺ってこんな奴だっけ?と思いさせられる。
俺に縋りついて来る女は俺が何もしなくても離れる事なんかないけど、アイツは俺が追わないと簡単に離れていくだろう。
あーあ…、馬鹿みてぇに情けねぇわ。
仕事と両立できねぇほど、気にしてんのかよ。
別に好きでもなんでもねぇのに、なんでこんなに気にしてんだろうと思ってしまう。
「…疲れた」
零れ落ちた声とともに俺は瞼を閉じた。