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「よほどこの仕事を受け入れてくれる女じゃないと無理っすよ」
「まー…でもここの奴、何人かいんだろ女居る奴」
「そうっすけど。だって俺、もし彼女がキャバしてたら絶対無理っすもん。好きな女が他の男にベタベタすんの無理っすもん。俺だけ見てろよって」
「なんだそれ」
思わず鼻でクスクス笑ってしまった。
「楓さんもそー思いません?」
「まぁ人にもよるけど、俺は嫌かも。分かんねぇけど」
「でしょー?だから反対の立場考えたら辞めるまで無理っす」
「お前さ、楽しいから辞められないっつったけど、お前が辞めたら付き合えんだろ?」
「まぁ、そう言う事っすね。辞めてって言われたから」
「じゃ、辞めろよ。そんなにその女が好きなら」
「そんな簡単に辞めれないっすよ。楓さん、辞められます?」
「んー…俺?」
「そう楓さんっす」
そんな女の為に辞めるとか考えた事ねぇっつーの。
むしろそこまで好きな女居なかったし。
「つか俺、そこまでのめり込むほど好きになった女いねぇし。だから分かんねー…」
「さすが楓さんっすよね、だって追われる事あっても追う事ないっしょ?」
〝うらやましいわ″
と、付け加える様に言ったアキに思わずタバコの煙と一緒にため息を吐き捨てた。
「そーでもねぇけど…」
なぜか頭の中に美咲が過る。
アイツは絶対、俺を追っては来ない。
もしアイツの事を本気で今以上に好きになってしまった時、俺はアイツの為に辞める事は出来るんだろうか…