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「そーでもねぇって、追ってる人いるんすか?」
「んー…そんなんでもねぇけど、俺にもよく分かんねぇ」
「あれ?何で恋愛マスターがそんな弱気なんすか?」
「つか恋愛マスターってなんだよ、」
「いやー…だって楓さん恋愛豊富っしょ?流星さんが言ってました」
「いや、だからアイツの事、信用しなくていいから。そんな豊富じゃねーし」
「えー…だから俺、楓さんに話したんすけど」
「は?」
意味が解らず顔を顰めたままアキをみる。
アキはペットボトルのコーラを口に含むと、小さくため息を吐き捨てた。
「いや、ホストの恋愛事情ってやつ」
「ますます意味分かんねぇわ」
「仕事であれども毎日女に囲まれてるじゃないっすか。でも本命の女を落とすテクみたいなの」
「はぁ?」
「束縛じゃねぇけど、他の女とは会うな、みたいな。でも仕事だから仕方ねえだろって、そこをどう言う風に戒めるか」
「戒めるって、それ違くね?」
「いや、合ってます。やっぱ結婚っすかね、すげぇ好きだから結婚するって」
「つか旦那がホストって嫌じゃね?俺だったら嫌だわ。つかお前さっき言っただろ。彼女がキャバだったら嫌って。それと一緒じゃねーのかよ。嫁がキャバって」
「あー…そか。じゃどうすれば?」
「知らねーよ。こっちが聞きてーわ」
「そんな事、楓さんが聞いてどうすんすか?」
「いや、まぁ…俺も分かんねぇわ。辞めるしか」
「ですよねー…」
結局そのオチだった。
物凄く俺の踏み入ってほしくないドストライクの質問をされた所為か、何て答えたらいいのかも分かんなかった。
むしろそんな事考えた事すらなかったから、敢えて何かに気付かされたようなもんだった。