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「おい、楓?」
バック裏を覗き込む流星に俺はタバコを咥えたまま見上げる。
「なに?」
「あのさ、近々取材したいって人が来てる」
「取材?前もしたけど」
「いや、違う女の記者。NO1の魅力について語りたいって」
「なんだよ、それ」
思わず苦笑い洩れ、隣にいるアキまでもが笑う。
「いいじゃないっすかー、楓さんの魅力」
「そんなの俺ねーし」
「しかも女性記者って、恋バナ好きっすよね。彼女にしたいのならどんな女性ですか?とか。そんな感じっすよね、流星さん」
「まー、間違ってはいねぇけど。丁度いいんじゃね?お前」
何を根拠にそんな事を言ってんのかも分かんねぇし、何でそこで笑ってんのかも分けんねぇ。
その意味深な言葉に、アキまでもが「なんか意味深っすよねー」なんて口にする。
「今回、パスし――…」
「じゃ、OKっつってくるわ」
「おい、ちょっと待て。今回――…」
「まーまーいいじゃないっすか。売れる時に売った方がいいっすよ」
「じゃ、取材お前がしたら?」
「俺が出来るんならそりゃやりますよ。すげぇ語りまくるっす」
「え、何をそんな語んだよ」
「聞かれた事はとことん語ります」
「つか、いざするとそんな語れねーって。プライバシーをさらけ出すようなもんだろ?それを世間にさらされたくねぇわ。人の領域に入られたくねーし」
「え、じゃ楓さん今までの作り話し語ってたんすか?」
「作って話すかよ。まー…抑える所は抑えて本心」
「俺、多分無理っす。そんな器用じゃねぇからペラペラ話まくるわ」
「だろーな」
自分で言ってケラケラ笑うアキに俺までも笑いが出る。
正直、そんな語るような事なんて何もないけど、俺にとっちゃそれを記事にされるって事が好きじゃない。
仕事の一環だと流星は言うけど、それが何なのか未だに俺には分からなった。