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「もーお前、それいいから」
彩斗が手に持っているのはこの前の雑誌の本で、それをペラペラと捲っていく。
「あ、ほらここ。好きな人いますか?結婚願望ありますか?って。…NO1ホスト彩吹楓。女を虜にする超売れっ子ホスト…」
「……」
「いいっすよね、言われてみたい。…給料は何に使ってますか?って楓さん、あんま使わないってマジっすか?今、初めて知ったわ」
「だってそんな使う余裕ねーもん、今忙しくて」
「あー…もう一つ仕事してますもんね」
「あぁ」
「マンション代と車と服とかっすか?」
「今はそんな感じ」
「あの車っていくらしたんすか?」
「えー…2ちょいくらい。前より全然安い」
「前より安いって、それでも2000万っすか?」
「ほぼ飾りだけど…」
「飾り?なんでっすか?」
「だってよ、ここで酒たらふく飲んだら酒がぬけねーんだよ」
「あぁ、ですよねぇ…」
「だからほぼタクシー」
「勿体ねー…。じゃ俺に下さい」
「は?…んでだよ、やらねーよ」
呟いてタバコの火を消したと同時に「おい、最後の奴、鍵掛けとけよ」流星の声で視線が向く。
「あー…じゃ、楓さん宜しくっす。俺もう帰るんで」
立ち上がった彩斗に軽く頷き、再びソファーに横になる。
つか、もう3時半かよ。取り出した携帯の画面に映る文字に一息吐く。
そして数秒もしないうちに瞼が落ちた。