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「…痛って、」
少しの仮眠から、けたたましく鳴るアラームの音で思い瞼が開く。
腕枕をしていた所為か自棄に腕が痛い。
身体を起して伸びをし、そのまま立ち上がる。
まだ眠い中、店を出て5時の早朝の風に俺は空を仰いだ。
生温かい風が肌に纏わりつく。
タクシーを拾おうと大道りに向かっている途中、「…楓っ、」その弾けた声に少しだけ眉が寄った。
「楓、久しぶり!」
明るさ満開のミカがそう言って俺の背中にダイブする。
「お前、その登場やめろって。背中痛い」
顔を顰め、俺は背中を擦った。
そんな俺とは対照的にミカは笑顔で俺の顔を覗き込んだ。
「てか相変わらず朝はテンション低いね」
「お前が元気なだけだろ」
「だって久々に楓に会えたから」
「あー…そう言えばお前と一か月以上も会ってねぇな」
「え、なに?会いたかったって?」
「いや、別に」
「ひどっ、」
「それよりお前、男どうしたよ?」
「んー…倦怠期ってやつ?」
「は?倦怠期?それって長年付き合った時に言う言葉なんじゃねーの?」
「そうだけど、ちょっと喧嘩中」
「だからってお前、そう言う時だけ俺んとこ来んなよ」
「だって楓に慰めてもらおうと思って」
「あー…無理無理。俺、そう言うの出来ねーから」
「店ではやってるくせにー」
ミカは頬を膨らませながら俺の顔を覗き込み意地悪な笑みを見せた。