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決心の行方
もう17時過ぎだと言うのに暑さの気温は落ちず、空気すら重い。
トビの仕事を終え、歩くアスファルトから熱気がくる。
気怠い身体の所為か、瞼も落ちそうになる。
ここ数日あまり寝てない所為か、頭までも重い。
軽く頭を擦って、息を吐き捨て目の前のマンションに目を向けた瞬間、俺の足は瞬時て止まり目が見開いた。
「みぃちゃん?」
目の前に居る美咲は笑みを浮かべて俺に手を振る。
つか何で居る。何しに来た。
そんな言葉が頭の中を駆け巡る一方、会いたかったと言う気持ちも混ざり合う。
複雑な感情が支配する。
足を進め美咲の前に立ち止まると、「お疲れ様…」その言葉がなぜか安らいだ。
「あ、うん。ってか何してんの?」
「ちょっと用が…」
用ってなんだよ。と思いつつオートロックを解除する。
「入んなよ」
そう言った俺の後を追う様に美咲は着いて来る。
「元気だった?」
俺のその言葉で美咲はコクンと頷く。
久し振りに見る美咲に俺の頬は必然的に緩んだ。
会いたいと思う気持ちって、こんなものなのかと。
会いたいと、自分から会いたいと、そう思わせる人物さえも巡り合った事がない所為か、今の俺にはよく分からない。
だけど会って気づいた。
心が和らぐ。
「ちょっと汚ねぇし風呂入ってくっから適当に座ってて」
玄関を開けてそう言った俺はそのまま脱衣所へと入る。
汗ばんだ肌を頭上からシャワーで流し、髪を洗いながら、美咲はいったい何をしに来た。と考える。
まさか美咲から来るなんて思っていなかったからこそ、余計に気になった。
美咲が用もないのに自分から来るはずが、ない。
「もしかして洗った?」
髪を拭きながらキッキンへ顔を出す。
流しが埋まりそうなくらいカップ麺のゴミが散らばるその場所は、何もなく綺麗に片付けられていた。
「えっ、洗っちゃダメだったの?」
「ううん、ありがと。つーか、すげぇ汚い部屋でごめん」
ありえないくらい散らばっているリビング。
こんな光景、正直、美咲には見せたくなかったと思うほど、散らばっている。
昨日帰って来たそのままのスーツに普段着。
洗濯を終えた服もソファーに掛けたまま。
それを掻き集め、俺は一旦、寝室へと持ち運んだ。