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「なぁ、みぃちゃん?みいちゃんがそう思ってんのなら片付けでもしてよ。空いている時だけでいいから」


結局、思いついた俺の考えはそんな事しか浮かばなく、これでチャラにしたいと。

案の定、美咲からは「…は?」と、気が抜けた声が落ちて来る。


その表情に俺は笑みを漏らし、美咲の頭をポンポンと軽く触れた。


「俺、結構部屋汚ねぇんだよな。だから、それと引き換えに金はいらねぇよ」


金はいらないから、美咲だけ居てくれればいい。なんて言えるわけもなく。

引き換えを条件に出す俺は相当に馬鹿なんだろう。

店だと簡単に口から零れて来る言葉もまともに言えない。

なんでここまで美咲にのめり込む。

高校生と言う敢えてグレーゾーンに俺は入り込もうとする。


俺の中で高校生は絶対にねぇと、思ってたのに…

そこまで恋愛感情なんかねぇのに、傍に居てほしいとか、まじで俺どうにかしてる。


「いや…、でもあたし週1くらいしかバイト休みないよ?」

「それでもいいから」


そう言って俺は一度離れ、薬袋を手にする。

って言うか、週1しか休みねぇとか、どんだけ働く気だよ。

そんな事を思いながら俺は何個かの錠剤を口に含みミネラルウォーターで流し込んだ。


「ねぇ…、」

「うん?」


美咲のか細い声に俺は視線を送る。

呆然と俺を見つめる美咲に少しだけ首を傾げた。


「どっか悪いの?」

「ん?どっかって?」

「ほら…、さっき飲んだのって薬でしょ?」

「あー…、うん」


無意識に、いつも通りに薬を飲んでしまった。

きっと美咲はあの日。車の中で見た事を気にしてるんだろうか。

だから俺は言葉を紛らわす様にタバコに火を点けた。
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