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「みぃちゃん?」
俺がここに来た今まで呆然と立ち尽くしている美咲に声を掛ける。
我に返ったようにハッとする美咲に俺は頬を緩ませた。
「何?」
「はい」
近づいて来た美咲に俺は持っている鍵を差し出す。
「あ、…え?」
「みぃちゃん用。受け取って」
俺にはこんな方法しか浮かばない。
情けねぇけど、ほかに繋ぎ止めるやり方が何も思いつかない。
「あっ、でも…」
「でも何?」
「あた…、あたしが来た時に誰かが居たらどーすんの?」
「誰かって誰?」
「お、女とか…」
え、その心配?美咲がそんな心配とかすんのかよ。なんて思うと次第に面白くなり、思わず鼻で笑う。
そして受け取らない美咲の手を掴み、その手の平に鍵を握らせた。
「心配ご無用。女で俺のマンション知ってんのは、みぃちゃんしかいねぇから」
多分誰も居ないはず。
流星らに口止めしている以上、知ってるやつはいないはず。
沙世さんとユカ以外、誰も知らない。
だから他の女は俺が住んでる所を知らないだろう。
知られたくがない為に、俺は敢えて店から離れた所を選んでいる。
案の定、美咲はビックリしてんのか目を見開いたまま俺を見ている。
俺が沢山の女を連れ込んでいるように見えるか?
そう思われてたらマジでショックだな。
美咲のその表情が面白可笑しく、フッと鼻で笑い足を進める。
「おーい、」
いつまで突っ立ってんのか分かんねえ美咲に声を掛けると、ハッと顔が上がる。
「みぃちゃん、送る」
コクンと頷いた美咲は慌てた様に鞄の中に封筒と鍵を突っ込んでいた。