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「折角来てくれたのに、ごめんな」
車のエンジンを掛けながら俺は申し訳なく口にする。
「ううん…」
本当は飯でも食わせてやりたい。そんな気持ちはあるものの、してやれる時間すらない。
だから思う。
あまり深く美咲にのめり込んではいけないと。
変な期待などさせないほうがいいって。
だけど突き放してしまうと、本当に居なくなりそうで。どうしたらいいのか分からない感情が何故かうっとおしく思えた。
なのに、のめり込んではいけないと思うのに…
「なぁ、みぃちゃん?」
「うん?」
「今度どっかいかねぇ?昼間しか無理だけど、みぃちゃんの行きたい所に連れてってやるよ?」
気付けばそんな事を口にし、俺は美咲に笑みを漏らしていた。
「水族館」
ポツリと零れ落ちた言葉に、思わず頬が緩む。
「えっ、水族館?」
「うん」
美咲の想像とはかけ離れた言葉が返ってきた所為か、俺の笑みは止まらない。
まさか美咲の口から水族館と言うフレーズが出てくるなんて思ってもみなかった。
「えっ、何?」
「水族館って…。みぃちゃん可愛いな」
やっぱ似合わねーな、美咲から水族館は。
しかも何故行きたい。
敢えて何故水族館を選んだのかが気になって仕方がない。
「…だめ?」
「いいよ。じゃあさ、みぃちゃんのバイト休みの日、教えて。その日に俺が合わせるから」
「いいの?」
「いいよ」
そうは言ったものの、美咲と別れてから俺は頭を悩ませた。
つか水族館って、どこにあんだろうと。
店の近くに車を停め、俺は携帯で探す。
水族館なんて行った事もねぇから何処にあるのかさえ分かんねぇし。
美咲が水族館ねぇ…
そう思うと更に笑みが零れた。