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「私そんな捻くれてないから」
「何?ママは翔の味方してんの?」
「つーかお前はガキかよ。生まれてくる子供がお前に似ないように祈るわ」
「ひどっ、」
「ねぇ、それより翔くん、肉食べない?」
「肉?」
「貰い物だけど、いい肉貰ったのよ。どうせお酒ばかりで食べてないんでしょ?」
「俺よりユカに食わせろよ。腹ん中にガキいんだし」
「いいよ。翔あんた食べな」
ユカはそう言いながら冷蔵庫からお茶を取り出し、グラスに注ぎ椅子に腰を下ろした。
「うん。ユカはもう食べたからいいのよ。むしろユカが翔くんに食べさせたらって言ってきたから」
「へー…お前、案外優しいな」
「でしょ?って言うか、昔から優しいお姉様だけど」
その誇らしげに微笑む顔に俺の眉間に皺が寄る。
可愛く″でしょ?″とか言うガラじゃねーだろ。なんて思いながら沙世さんが冷蔵庫から取り出した木箱に視線を向けた。
「すげっ。木箱って、」
「なんかね、高級料理店の料理長がくれたの。高級すぎてなかなか手に入らない肉なんだけど、たまたまいつもより取り寄せられたからってくれたのよ」
「こんなのくれんの?すげー…沙世さん、顔広いっすね」
「翔くんのほうが顔広いじゃない」
お肉を木箱から取り出し、沙世さんは俺を見てクスクス笑みを漏らした。
「そんな高級料理店に行く暇もねぇんだけど」
「相変わらず忙しそうだねぇ…。翔くん、この肉しゃぶしゃぶでいいよね?豚も牛もあるし」
「何でもいいっす」
「用意するね。野菜もあるし」
「…いや、野菜いらねぇから」
「何言ってんのよ。ちゃんと栄養とらないと身体に悪いわよ」
「そーそー、アンタねぇ…手料理作ってくれる女が居たら別だけど、いないんなら尚更食べないと」
「あー、はいはい」
つか余計なお世話だっつーの。
適当にあしらって、沙世さんが用意する後ろのテーブルに移動する。