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「ねぇ、それより最近どうなの?」


移動した俺を追っかける様にユカは隣に腰を下ろし、俺を覗き込んだ。

そして頬を緩めた。


「は?最近ってなにが?」

「だから最近いいことあったか聞いてんの?」

「ねーよ、そんなもん。つか何?そんな事聞いても楽しくねぇだろ」

「楽しいよ。昔と今、どう変化していくのかってね。人間観察」

「お前、変な趣味してんな」

「趣味じゃないし。興味だから」

「どっちもよう似たもんだろ」

「違うわよ。やっぱ外見ばかりじゃないわよ。内面を見極めないとね」

「……」

「そう思うでしょ?」

「……」

「ねぇ聞いてんの?」

「もー、お前うるさい。飯食うから黙れ」

「冷たい男ね」


面倒くさいユカに一息吐き、俺は沙世さんが用意した肉を頬張る。

ほぼご飯なんてインスタントの所為か久しぶりに飯が美味しく感じた。

食べ終わった頃には、あんなにうるさかったユカがソファーに横たわって寝ている。

その横顔が沙世さんにそっくりとしか思えなかった。


「あ、ユカ寝たんだ」


沙世さんがユカに気付きタオルケットを掛ける。


「沙世さんさー…ユカに似てるって言われね?あ、ユカが沙世さんに似てんのか」


そう言って俺はお茶を口に含みながら苦笑いをした。


「うん、言われる。姉妹って言われる時もある」

「え、あー…マジか。まぁ沙世さん、綺麗もんな」

「えー、なになに?それ口説いてる?」

「は?んな、口説かれる年齢でもねぇだろ」

「はぁ!?なによ、それ。失礼ね!」


沙世さんの拳が俺の頭に軽く直撃する。

グラント揺れた頭を戻しながらフッっと馬鹿っぽく笑みを漏らした。


「痛って。大丈夫、年齢なんて関係ねぇから」

「嬉しくもないお言葉ありがとう。それに夫だけで充分よ」

「おぉ、すげぇ。そんな愛されて哲也さん、嬉しいだろうな」

「でしょー?」

「はいはい。その年でノロけんなよ。だったら早く帰れよ」

「あれ?言ってなかったっけ?あの人、今海外に単身赴任してんのよ」

「は?まじ?聞いてねぇわ」

「何かあった時ように翔くんの席残してるからねー」

「どうも。途方にくれたら行くわ」

「途方にって、暮れる事もないでしょ?」

「さぁ…分かんね。いつかはホスト辞めようと思ってるけど、その先の事なんか考えてねぇし、この先の事なんか、全く…」

「あら、そうなんだ」

「ちょいタバコ吸って来る」


立ち上がった俺に沙世さんはボンヤリと俺を見つめたまま軽く頷いた。
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