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誰と言われても今は答えようがない。
俺が一方的に追っかけている女とでも言ったらいいのだろうか。
好きな女とでも言ったらいいのだろうか。
俺にはいまいちよく分からなく。美咲の事が、好きなのかも分からない。
だけど、会えば離したくなくなる。
美咲が俺を追っかけてこねぇから、余計に追いたくなる。
なんだか、よく分からない感情にため息が漏れる。
家に着いた時には既に6時を回っていた。
シャワーを浴び、髪をタオルで拭きながら俺はソファーに深く腰を下ろす。
さっき持ってきたウインターゼリーを口に含みながら、何故か頭を過るのは美咲の事。
何してんだか、どーしてんだとか、思い浮かべるのはそんな事。
ほんと、どうでもいい事なのに。
考えてる自分が馬鹿らしくなる。
「はぁ…わかんね、」
小さく呟き、テーブルの上にある薬を水で流し込み、作業着に着替えながらまたため息を吐く。
疲れていた所為か、片付けが出来ていない、この散らばった部屋に余計に疲れが込み上げる。
そのままにしていたビールの空き缶と灰皿から溢れそうなタバコの吸い殻を片付け、脱ぎっぱなしにしていた服を洗濯機に放り込んだ。
濡れた髪を適当に乾かし、玄関へ向かう。
着飾る事などしなくていい分、すげぇ楽。
「…翔さーん、遅いっす!」
7時半になろうとしていた時間。
マンションの前で待っていたタケルは車の窓から、声を上げた。