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「7時半じゃねーかよ」
そう言いながら助手席に乗り込む。
「だって俺、7時から待ってたっす」
「は?お前から7時半っつったのに?」
「翔さんに早く逢いたくて」
ハハッと笑うタケルは車を発進させる。
「はいはい」
「なんすか、その適当な返事」
「朝からお前のテンションについて行けねぇわ」
「つか翔さん、夜の仕事中もそんなテンション低いんすか?」
「…んな訳ねぇだろ」
「どっちか仕事辞めたらどーっすか?」
「んー…」
「つーか翔さんはどうしたら疲れブッ飛ぶんすか?ここ最近、疲れたばっかっすよ?」
確かにタケルの言う通りで。
最近の口癖が″疲れた″になっている。
我慢すればするほど、疲れが日に日に増している。
「どうしたらねぇ…俺にも分かんねぇけど、そんなもんねぇわ」
「よし!今日の昼飯はガッツリ肉を食いましょう。スタミナつけたほうがいいっすよ」
「つーかそれ。俺の奢りじゃねぇかよ」
「あざーっす!」
はぁ。と深いため息を吐きだし、言ってた通り昼食は肉。
なんだかんだ言って、俺もタケルに甘いよな。
「お前さ、俺より食ってねぇか?」
目の前でどんだけ食うんだよ。と言っていいほどタケルは肉を食う。
この後まだ仕事だと言うのに、その食いっぷりに俺は唖然とした。
絶対こいつ、後で腹一杯で動けねぇとか言うやつだろ、きっと。
「スタミナつけねぇと」
「もう十分ついたんじゃね?」
「いや、俺最近、性欲は落ちてるんすよ」
「は?」
「だからスタミナつけねーと」
「お前、そんな奴いんの?」
「いねぇけど」
「あ、そう」
「翔さん、いい女居たら紹介して下さい」
「だから、紹介するような奴いねぇって」
「居たら言って下さい」
「はいはい」
一生いねぇけどな、そんな女。
そんな事を思いながら、先に食い終わった俺は、目の前でガツガツ食うタケルを呆れながらに見ていた。