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「昨日、何してたの?」
「悪い。体調悪かった」
「体調?…ほんとかしら」
「まじで。今も気分悪い」
ただの口実だった。
今の気分の悪さを昨日の事にして、頭の片隅に美咲が過る。
結局、連絡すらしてこなかった美咲に、ため息を吐きだした。
「ため息吐かないでよ」
「…悪い」
思わず吐き出してしまったため息を誤魔化す様に苦笑いを作る。
案の定、リアは不貞腐れ気味に眉を顰めた。
「吐きたいのはあたしでしょ?一番に行ったのに居ないし」
「電話してくれれば…」
「電話?したら出たの?」
「あぁ。つか、あの後すぐに行ったから居てくれれば良かったんだけど」
「あたしもそんな暇じゃないんだけど。ほんの少しでも会いたいって思って行ったのに」
「悪い。だから今、目の前に俺いんだろ?」
「もう一度、あたしが来たからでしょ?…ねぇ、抱きしめてよ」
頬を少し緩めたリアに俺の手が必然的に動く。
だけどギュッと抱きしめる事はなく、左手だけが動いた。
抱え込む様にリアを抱きしめ、そのまま手はリアの後頭部へと回る。
「これで満足?」
「これで足りると思ってるの?」
フッと俺が笑うと、リアの視線が徐々に上がる。
高いヒールを履いてる所為か、見上げるリアと俯く俺の頬が微かに触れた。
「ねぇ、楓?ホテル行こう。あたしを抱いてよ」
「つか俺、抱かないって何度も言ってっけど」
むしろ朝から抱くとか、まじで勘弁。
「やっぱりそれだけは守るのね」
「当たり前だろ」
「このまま時間が止まればいいのに」
その言葉で思い出す。
全く同じ言葉を美咲に思ったのと同じで、また頭に美咲が過る。
なのに俺は今、リアを抱きしめている。
…何してんだよ、俺。
現実が引き戻すかのように、リアの身体をスッと離した。