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「悪い。今、いいか?」

「いいっすよ。もしかして美咲の事?」

「そう。あいつ何してる?」

「さぁ…俺もわかんねぇんだよ。学校にも来てねぇし」

「行ってねぇの?アイツ」

「あぁ、来てねぇよ。この一週間」

「は?マジか、」


一週間も行ってないって、訳わかんねぇわ。

母親の看病でもしてんだろうか。


「葵に聞いても分かんないって。それどころか葵もアイツと話してねぇっつってたから」

「そう…」

「なんか約束でもしてたんすか?」

「まぁ、な…。美咲の母親、大丈夫なわけ?」

「その事についても全く分かんねぇんだけど、葵が一回見に行ってみるとは言ってたけど」

「そっか。アイツも大丈夫だといいけど…」

「大丈夫だろ。そんなそこらじゃアイツはくたばんねーよ」

「なんだそれ…」


そりゃそうだな。と思いながら思わず諒也の言葉に苦笑いが漏れる。

諒也との電話を切った後、俺は仕方なくクローゼットから取り出したスーツに身を包んだ。


美咲との連絡が取れないのであれば必然的に仕事へと向かうしかない。

今の俺には決して楽だとは思えないホストの仕事。

癒すどころか、この俺が癒されてーわ。なんて思ったりもした。


そう言ったものの、結局その癒されるの意味も俺にはよく分からないものだった。

仕事での偽りの癒しを求めても、偽りの癒しさを客にあげても本当の癒しさも癒され方も知らない。

結局は作り話で、昔から外見だけを見て言われてきた言葉に俺には全てが嘘にしか聞こえなかった。

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