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「翔くん、お待たせ」
暫くして沙世さんの声と肩を揺する感覚でゆっくり目を開ける。
身体を起して暫く俯き、息を吐き出し、重い身体を立ち上げた。
「相当、弱ってんね」
苦笑いする沙世さんに、軽く首を捻った。
「別に」
「男前が台無しよ?」
「はい?」
「病んでるその姿がね…」
「はいはい」
「ほんと適当ね」
適当にあしらう俺に沙世さんは笑いながら裏口の扉に鍵をする。
真っ暗な中、街灯で照らされた明かりだけを頼りに、俺と沙世さんは繁華街を歩いた。
「そういや、ユカはどーしてんの?」
「あ、そうだ。翔くんから貰ったお金預けたらありがとうって言ってたよ。来週さ、予定日だから家でのんびりしてる」
「え、もう来週予定日?」
「そう。早いでしょ?産まれたら教えるから見に来たら?暫くはこっちに居るしさ」
「まー…また見に行くわ」
「見たら翔くんも早く子供欲しいって思うよ?」
「なにそれ。さすがになんねーわ。俺自身まだ子供だかんな。もっと大人になってから」
「ふーん…以外ね。ちゃんと考えてんだ」
「考えるっつーか、そんな事、思った事一度もねーわ。話ぶっ飛び過ぎて、答えようもない。つか沙世さんが早すぎんだろ」
「だって、出来ちゃったんだもん」
「あー…沙世さんに似てうっせー女がな」
「失礼ね、あんた本当に百合香に似てないわね」
「は?この前、似てるっつっただろ」
「そんな事、言ったかしら」
フフっと笑みを漏らす沙世さんは車の前まで来ると鍵を開ける。
乗り込んだ俺は椅子に背をつけた瞬間に睡魔が襲ってくる感覚に目頭を押さえた。