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「ねぇ翔くんさ、良かったらうちで住む?使ってない部屋あるしね、私一人だし」
「はぁ?なんの為に?」
突然の言葉に俺は瞑りかけた目を開ける。
ビックリする俺とは逆で何故か沙世さんは笑ってた。
「乱れてる身体と食生活を改善するため」
「まじお節介だな。そー言うのいいから」
「親切に言ってるのに、やな感じね」
「有り難く心に閉まっとくわ」
「よけやな感じだわ。…早く良い人見つけて健康管理ちゃんとしてもらったほうがいいわよ。あなたの身体そんなよくないんだから」
「はいはい」
小さく呟く俺は窓側を向いて目を瞑る。
そんな奴、居たらとっくにそうしてるっつーの。
「もぉ、ほんと心配して言ってるのに」
「俺まだ23だし」
「だから何よ?まだ遊びたいって?今まで散々迷惑かけて遊んできたのに?」
「……」
「それもいいけど、自分の身体の事を考える方が大事よ?後になってから気づかされる事なんて沢山あるんだから。翔くん、そんな感じでいると入院する羽目になるわよ?」
「そーっすね」
「ほんと、適当よね」
隣からため息が聞こえる。
沙世さんの運転の心地よさに更に睡魔が襲う。
そのまま眠ってしまった俺の肩が揺れたのは暫く経ってからだった。
「翔くん、着いたよ?起きて」
「…ん、」
「大丈夫?そんなので朝の仕事行けるの?」
「あぁ。ありがとな」
目頭を押さえながら車から降りドアを閉める。
「翔くん?ちょっと待って」
沙世さんの声で進んでいた足がピタリと止まり振り返る。
運転席の窓から紙袋を差し出す沙世さんに俺は近づいた。