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「お母さん、入院してんだって?」
「うん」
「大丈夫か?」
「うん。心配かけてごめん」
「無理すんなよ。なんかあったら言って」
「うん。ありがと」
「なぁ、みいちゃん?」
「うん?」
「いや、何もねぇわ。じゃあ、またな」
「うん」
あんなに出てほしいと思った電話だったのに、いざ話してみると特に話す事もなかった。
ただ声を聞けただけで安堵するも俺は複雑な気持ちだった。
美咲のあまりにも沈んだ声に問いただす事も責める事も出来ず、むしろ最後に会いたいと言おうとした言葉さえも言えなかった。
夜の仕事だと簡単に言える言葉がどうしても美咲には言えなかった。
だけどこの電話を辞めてしまえば本当に美咲との関係は終わってしまう。
それでも別にいい。
正直、面倒くせぇし。
なんて思う反面、何故か避ける事も出来ず俺はその繋がりだけを信じて何回か電話をした。
だけど。
数回電話に出てくれたものの、また美咲は電話に出る事は一度もなかった。