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「風呂入るわ」


そう言ってリビングを出て風呂場に向かう。

結局ユカの所為で目が冴えてしまった。

結構寝た所為か酒の酔いは全くなく、いつもより身体が楽だった。


シャワーを浴び、どれくらい経ったか分からない頃、リビングに顔を出すと、ユカはテーブルの上に鍋を置いていた。


「翔も食べるでしょ?ママがねアンタに肉と野菜食べさせてーって喚いてたの」

「つか何飯だよ、」

「15時だけど昼御飯だよ」

「お前も食うの?」

「だってその為に来たんだから」

「え?食うために?」

「あんた一人で寂しいと思って」

「……」

「だからね、昼ごはんも食べずに来たんだよ?」

「そりゃどーも。この季節に鍋って」


髪をタオルで拭きながら椅子に座り、鍋に視線を移す。


「そんな事言うけど真夏にアンタと鍋食べたでしょ?肉食べたいって言うから」

「あー…食べたな。なんか肉っつったら鍋になってねーか?」

「だって簡単じゃん?詰め込んだらいいだけだし。冬はさ毎日鍋でいいよね?」

「は?飽きんだろうが。なんか旦那が可哀想だな」


苦笑いで笑うとユカが顰めた顔で俺を見た。

その視線を外し、出来上がったであろう肉を頬張った。


「何が可哀想って?ダーリンの前ではちゃんとやってるわよ」

「ははっ、なにそれ。お前の本性見せてねーのかよ」

「あたし。裏表ないから」

「は?ありすぎだろ」

「ないよ。だから疲れたりしないもん」

「へー…」

「そんなアンタはちょっと疲れすぎじゃない?」

「ほっとけよ」

「ママがね言ってたんだ。好きな子が出来てから疲れてるって。両立出来ない子だからって」

「は?つかお前ら親子、俺の話すんの辞めてくんね?」

「あら。なんで?」

「すんな。そもそも俺、好きな奴いるって言ってねーかんな。そんな話一言もしてねぇし」

「へー…そうなんだ。じゃ何に疲れてんの?」

「仕事に決まってんだろ」

「そんな二つもしてっからでしょ?辞めればいいじゃん」

「……」

「って、あんた。肉ばっか食べてないで野菜食べなさいよ!」


俺の皿を取ったと思えば、ユカはその中に野菜をてんこ盛りに入れて来る。

入れすぎだろ。と思うほど入った皿を俺の前に置くと、


「食べてね」


なんて可愛く言ってきたユカにイラっとする。
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