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「あんたさ、ほんと飲むの控えた方がいいわよ」
「わかってる」
食べ終わった後、スーツに着替えた俺にユカは低い声で言い放つ。
テーブルに置いてある腕時計を嵌めて、タバコを咥える俺にユカのため息が漏れた。
「言ってるそばからタバコ吸って、あんたガン検査したほうがいいわよ?ママもそう言ってたし」
「大丈夫、大丈夫。一年前に強制的にされて何もなかったし」
「毎年するほうがいいんじゃない?」
「…大丈夫だろ」
「わかってないね、アンタは。今は大丈夫かも知んないけど定期的にしとかないと破壊されたらもう終わりだよ?進行なんてね、徐々に進んで行くんだから」
「……」
「そのうちアンタ本当に入院しちゃうよ?ママもそう言ってた」
「はいはい」
「ほんと適当よね」
ユカは深いため息を吐き、食べた後の片づけをしていく。
いつの間にか物凄く散らばっていたテーブルが物一つ置いてなくて、綺麗になっていた。
外に出た頃にはもう辺りは薄暗くなっていて、少し肌寒さを感じる。
先に呼んでおいたタクシーに俺とユカは乗り込み、ふと思い出し俺はポケットから財布を出し、
「はいよ」
抜き出した3万円をユカに差し出す。
「え、なに?」
「タクシー代。俺の方が早く降りっから。残りは出産祝い」
「いいわよ、そんなの。結婚祝いも貰ったしね、ありがと。だからいいよ」
「あれはあれで、これはこれ。んじゃ可愛いべビに何か買ってやれよ」
2つに折りたたんだ札をユカの鞄の中にスッと入れると、
「あの頃はどうなるかと思ってたけど、アンタほんと優しくなったねぇ…あ、ちょっとだけだよ、ちょっとだけ。1センチくらいね」
そう言って、″ありがと″付け加えるかのように呟いてユカは笑った。
「は?1センチとか意味わかんねぇわ」
「あ、そだ。お祝いのお返し何がいい?アンタだけ返してないわ」
「いらねぇわ、そんなの」
「えー…なんで?何か決めとくよ。ペアのマグカップ」
あはは。と声に出して笑うユカに顔を顰める。