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「おい、」


居てもたっても居られなく、俺は美咲の肩に触れる。

その瞬間、ピクリと美咲の肩が上がり、美咲の身体が震えた様な気がした。


「どした?」

「なんでもない」


ここに来て初めて俺に口を開く美咲はそう言って首を振る。

だけどその声が少し震えているような気がして、俺は美咲の顔を覗き込んだ。

だけど俯きすぎて分かんない美咲の表情に俺は美咲の頭の手を添え、グッと上に上げる。


サラサラとした髪が邪魔をし、俺はその髪を少しだけ救い上げ、背中に回す。

その時に見えた耳に光るピアスが自棄に輝いて見えた。


「泣いてんのか?」


見えた表情は悲しそうな美咲の瞳。

少し唇を噛みしめた美咲の瞳とかち合い、そしてゆっくりと首を振った。


「とりあえず中入ろ」


軽くポンっと美咲の背中を押す。

それに釣られて進む美咲の足。


リビングに入った瞬間、ふと思い出す。

荒れ果てたテーブルがユカによって綺麗に片付けられていたこと。

今思うと、あの光景を美咲には見られたくなかったから、凄く良かったと思ってしまった。


「座れよ」


突っ立っている美咲の肩に触れる。

そして俺はキッチンへと向かい、美咲の冷え切った身体を温めようとミルクティーを作りテーブルの上に置いた。


「はいよ」


未だ立ち尽くしている美咲を見つめ、俺はソファーに座りタバコを咥えた。

火を点けて最初の煙を吐き出した時、俺はタバコを咥えたままテーブルを中指で数回叩く。


それに気づいた美咲に俺は目の前のソファーに指差した。

いつまで突っ立ってんのか知んねぇけど、座れよ。


だけど美咲は座る事もなく、「…みぃちゃん」と深いため息を吐き捨てた。


「座れって」


ようやく座ってくれた美咲に、安堵のため息が漏れる。

だけど美咲は口を開く事もなく、ただずっと視線を一点に集中させていた。


今、お前は何を思ってんの?

何を考えてんだよ。
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