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「何でそんな経緯になんのか意味分かんね」
マジで、意味わかんねぇわ。
改めて考えると本当に訳わかんなくて、もっとその理由を美咲の口から聞きたいと思う。
俯いたまま何を考えているのか分かんない美咲に一息吐く。
少しづつ目の前の灰皿に溜まっていく数本の吸い殻。
そして俺は気を紛らわすかのように、またタバコに火を点けた。
「俺はさ、」
「……」
「俺はさ、みいちゃんと離れる気はねぇよ。みぃちゃんが何をどう思ってんのかは分かんねぇけど俺は離れる気はない」
だからと言って、好きだから。って言葉は言えない。
言ったら言ったで、今以上に俺は美咲を困らせる事になる。
今までずっと、好きかどうか分かんなかったけど、離れたくないと思う事は、きっと美咲の事が好きなんだろう。
「…何であたしに構うの?」
小さく震えた声が聞きずらい。
好きと言えたらどんなに楽だろうと。
言ったら、美咲の夢を壊しそうで、俺には言えなかった。
「みぃちゃんの近くに居たいから」
「何それ…」
案の定、美咲の口から出た言葉は、俺が思った通りの言葉だった。
「そのまんまの意味」
「…同情してんの?あたしが可哀想だから?」
「違げぇよ」
「あたしより…もっといい人いっぱいいるよ。…帰るね」
つか、なんでそうなる。
立ち上がって数歩進んだ美咲に、「どこ行く気?」と声を掛ける。
「帰る」
「どうやって?」
「なんとかなるよ」
なんとかなるって、なんとかなんねぇから迎え頼んだんじゃねぇのかよ。
むしろこんな真夜中に帰らす訳ねぇだろ。
ため息を吐きだし、タバコの火を消すと俺は立ち上がって玄関に居た美咲の腕を強く引っ張った。
「待てって」
必然的に真向かいになった身体を美咲は避け、俺に背を向ける。
その瞬間、美咲の手が頬を拭ってた。
ごめん。強引な俺で、ごめん。
でも帰す気ねぇから…
美咲を泣かせる為にココへ連れて来たんじゃない。
「…みぃちゃん?」
「……」
美咲の肩に手を乗せ顔を覗き込む。
潤んでるその瞳に、ごめん。と心の中で呟いた。