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その日は最後の最後まで、調子が悪かった。
″今日はちょっと違うね″
女達に言われたその言葉は何回言われたのかも分かんなかった。
普通通りにしてたつもりでも、そうじゃなかったらしい。
自分にでもわかってたけど、他人に言われると余計に実感する。
朝方になろうとする早朝、俺は寄り道せずにすぐに帰り、ソファーに倒れる。
寝ころんだまま、ポケットに手を突っ込み、そこから出て来た一万円札を暫く眺めた後、テーブルに軽く投げた。
「マジ疲れた…」
小さく漏れた声とともにため息を吐き出す。
そのまま携帯を掴んで、画面にタケルの番号を映し出した。
「…はーい」
眠そうなダルそうなタケルの声が受話口から小さく漏れる。
「俺」
「つーか、翔さん何時だと思ってんすか?まだ5時っすよ?」
「悪い」
「なんすか?」
「悪いけど、今日休むわ」
「女っすか?」
「お前じゃねーんだから違げーよ!体調悪い」
「へー…体調ね。珍しいっすね」
さっきとは一転、クスクス笑うタケルにため息が漏れる。
「悪いけど、親方にそう伝えて」
「へーい。了解」
電話を切ってすぐ風呂に入った後、その日の事を忘れるくらい眠った。