Domain
どれくらい長居したのかわからないくらいだった。
食べ終わった後、俺たちは外へ出る。
「翔さん、ご馳走さんっす」
「ご馳走さんです。楓さん…」
「はいよ」
「今度は蓮斗さんで食いに行きましょう」
「は?無理」
「速攻拒否んないでくださいよ」
「拒否るわ。遠慮して食わねぇお前らの飯代なんか払うかよ」
「そー言う蓮斗さんだってガブガブ飲んでたじゃないっすか」
「俺はいーんだよ、俺は」
「は?意味わかんないっす」
「まじ意味分かんないっす。ねぇ、楓さん?」
振り向いたアキとタケルに、「どっちも意味分かんねぇわ」顔を顰めて口を開く俺に、ハハっと蓮斗が笑う。
「んじゃお前ら気をつけて帰れよ」
「うわぁぁ…蓮斗さん逃げた」
「はいはい帰った帰った」
笑いながらシッシと手で追い払う蓮斗に、不貞腐れるように2人は背を向けて歩き出す。
「じゃー、またっす」
「おぅ、お疲れ」
タケルとアキと別れた後、駐車場に停めていた車の前に来ると、俺はタバコを口に咥えた。
「…で?お前は何でそんなに悩みの種が増えてんの?」
咥えた瞬間に蓮斗はクスクス笑いながら俺に問いかける。
火を点けて思わず眉間に皺を寄せる俺に、蓮斗は更に笑みを零した。
「は?何も増えてねぇし」
「まー、そう言う事にしとくわ」
「…んだ、それ。流星に何きいたか知んねぇけど、多分ほとんどがアイツの妄想だからな」
「妄想ねぇ…そんな感じじゃなかったけど」
「お前、あれじゃね?流星に洗脳されてんじゃねーか?」
「されてねーわ。俺が人に流されるように見えっか?」
「流星にならありえるわな」
「まぁ、アイツも一人で話してっからなぁ…」
クスクス笑う蓮斗も同じくタバコを咥えて火を点ける。
そして遠くの方に視線を向けた途端、一瞬にしてさっきの笑みが消え、蓮斗はある場所を一点に見つめた。