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そして、その次の朝。
現場に着いた俺はタケルを見た瞬間、思わず顔を顰めてしまう。
「翔さん、おはよーっす。…って、なんで怒ってんすか?」
気怠い欠伸をしながらタケルは首を傾げる。
「俺、お前とは距離を置こうと思ってる」
「はぁ?意味わかんねーっす。俺らまだ付き合ってそんな経ってねーのに距離あけるとか…」
「頼むから距離おきてーんだよ」
「無理っす」
「10万やるから」
「少なすぎます」
「じゃ100万で」
「無理っす」
「じゃ、いくらだよ?」
「んー…ざっと一千万っすかねぇ」
「わかった。昼休み下ろしに行ってくっから」
「マジっすか?やったぁ!…とか言うと思います?無理っす。翔さんの側から離れるなんて…。俺、なんかしました?」
「存在がしてる」
「はぁ?意味わかんねーす。俺、翔さんいねぇと生きていけねーもん」
「それは飯が食えなくなっからだろうが」
「ま、それも一律ありますけどーー…」
「つか2人で何言い合ってるんすか?」
遮った仲間の笑い声で視線が動く。
ケラケラ笑った3人が俺らを面白そうに見つめ足を進めていく。
「ちょー、翔さんが距離おきたいって、」
足を進めていく3人の背後にタケルは声をかける。
その声に振り返った3人のうち1人が、
「え?2人出来てたんすか?」
なんて馬鹿なことを言い出す。
「そうそう俺らね、」
「ちげーだろ!…とにかくお前これからは蓮斗と供にしろ」
「蓮斗さん怖いっすもん。見られてるだけで威圧感っつーの?そう言う――…」
そのタケルの言葉を遮ったのは音を入れたままだった俺の携帯で。
画面には″リア″と表示されている。
思わず一息吐き、そのまま俺はタケルを無視してその場から離れた。