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大切な存在


美咲と会ってからもう既に一週間。

俺が電話をした日から、一度も電話をすることもなく、美咲から掛かって来ることもなかった。

だけどそれがもう俺らの中じゃ当たり前になっていて、今更どうも思わなくなっていた。


夜の仕事を終え、店で少しだけ仮眠をとった俺は重い足取りで帰宅する。



…午前3時50分。

真っ暗な玄関に明かりを灯した時、そこにある靴に視線が落ちた。


…美咲?


慌てて寝室を見るも居なく、俺はリビングに向かった。

ソファーに身を縮めて眠っている美咲。


「…みぃちゃん」


思わず声を出した俺に、美咲はゆっくり身体を起す。

居る事に驚いた俺は美咲の姿をみて正直ホッとした。


あれから、どうしてたんだろうって。

だからと言って電話もすることも出来なかった。


「いつから居た?」

「…昨日…から…」

「ずっと待ってた――…」


のかよ。って言葉が途切れた時、俺の胸に美咲が飛び込んできた。

あまりにもビックリした所為か俺は少し戸惑う。


…どした?


俺の両手をギュッと掴んで俺の胸に顔を沈める。

その掴んだ力があまりにも強くて、


「…みぃ…ちゃん?」


つい困惑した声を出してしまった。


「…怖いの…」


小さく吐き捨てられた言葉と同時に今度は美咲の手が震えて行くのが分かる。

今にも泣きそうな、今にも壊れそうなその声と華奢で壊れそうな身体に俺は吸い込まれそうになった。

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