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「だったら何だよ。あんたみたいに呑気に生きてねぇんだよ!!こっちは必死なんだよ!何も分かってねぇくせに急に現れて引き止めてんじぇねぇよ!!」
部屋の中にジーン…と響き渡る美咲の張り叫んだ声。大声を出した所為か美咲は息を切らし呼吸を整えようとする。
あぁ、お前の事なんかなんも知らねぇよ。
お前が何に必死になってんのかも、何も知らねぇよ。
でも、俺が呑気に生きてるって?
何を根拠にそんな事言ってんだっつーの。
お前も俺の事なんも知らねーだろうが。
俺の何を知っている。
悪いけど、俺も呑気に暮らしてねーんだよ。
呑気に暮らすほど暇じゃねぇよ。
だからと言って、別に聞いてっほしい訳でもないし語りたくもない。
睨んでくる美咲に小さく舌打ちをし、後ろのポケットから長財布を引っ張り出した。
何枚あるか分からないその札束を掴む。
それを一気に取り出し、ベッドに座っている美咲の頭上に向かって、すべての札を投げ捨てた。
別に助けようとは思ってなかった。
だけど金に困ってたあの頃の俺と重なり合って、どうしようもなくなってた。
そんなにお前は何に必死になっている。だからと言って、お前と寝て金をあげる気にもなれねぇ。
パラパラと落ち切った札を呆然として美咲は見つめる。
「今はそんだけしかねぇ。足りなかったら今度やる」
別に今度なんかないと思ってた。
これで終わりにしたいと。
未だに驚きの表情を隠せない美咲から視線を離し、俺は床にあったシャツ掴んだ。
そしてそのまま腕を通しながらドアへと向かった。