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「怖いって…何が?」
「分かんない。分かんないけど怖いの」
美咲の震える声が何に示しているのかも分からなく、俺はギュッと美咲の身体を両腕で包み込んだ。
ずっと、こうしたいと思っていた。
ずっと、こうしてやりたいと思っていた。
美咲が俺に対する気持ちなど、どうでもいい。
一方的でもいい。
ただ、俺から離れないようにと、ずっとこうしていたいと思っていた。
「無理しなくてもいい。強くなろって思わなくてもいい。ただ、そのままのみぃちゃんで居ればいい」
ただ、そのままの美咲が俺は好きだから…
だからこのまま俺の傍から離れないでほしい。
だけど、現実はそう甘くはなく、美咲の夢を叶えてやるのが俺の最善策だって分かった時、どうしようもない感情が湧き上がっていた。
このまま強引にキスをすることも出来ず、これ以上の事は何も出来なく…
そして好きとも言えず、この訳の分からない関係にどうしようもならなくなっていた。
「…みいちゃん?」
「……」
「疲れてる?ベッド行って寝ておいで」
俺の言葉が届いてないのか、美咲はまだ俺の胸に顔を沈めたままで、動こうともしない。
このまま抱きしめ合っていても、俺の理性が落ち着くわけでもなく、
「抱っこして連れて行こうか?」
薄っすら微笑む俺に美咲は首を振りながらスッと離れた。
「だ、大丈夫」
「そんな嫌?抱っこされんの?」
「お、重いから…」
「こんな細いのに重い訳ねーじゃん。ちゃんと食べてる?」
「うん、食べてるよ」
「なら、いいけど。…もう今日は寝な。部屋着、用意するから」
「…うん」
スウェットを手に寝室に向かうと、ベッドの上で座っている美咲に手を足す。
「はい」
「ありがとう」
「ううん。俺、風呂入っから、おやすみ」
そう言って部屋から出ようとした瞬間、「…翔っ、」その声で俺は振り返った。