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「うん?」
「ごめんね。急に来てごめんね?」
「何で謝んの?」
「迷惑だよね?ごめんね?」
「迷惑なんて、これっぽっちも思ってねーよ」
「……」
「俺はみぃちゃんが来てくれて嬉しい。ほんとにそう思ってるから」
微笑んだ俺に対して美咲は何故か悲しそうに笑みを浮かべ、俺から視線を落とす。
その表情を見て、俺は部屋を後にした。
美咲の辛そうな瞳が揺れ動き、それを必死に隠そうとしているその姿に、俺はこれ以上何も出来なかった。
抱きしめることは出来ても、無理やりのキスも抱く事も俺には出来なくて、正直俺はどうしたらいいのかなんて分かんなかった。
風呂から上がりベッドに横になる。
眠る美咲を見て俺の瞼はすぐに落ちた。
耳元で鳴るアラームが自棄に早く感じた。
結局寝たのは一時間半くらいで、身体を起してまだ冴え切っていない頭を擦る。
俺の方を見て眠る美咲の頬に無意識に手が伸び、俺はそっと触れる。
…何もしてやれなくて、ごめんな。
傍に居たいと言ったのは俺なのに、美咲の不安も何もかも全て取り除くことが出来ない。
何に迷って、何に苦しんでいるのかさえ、分からない美咲の心の中に、俺は深く入る事も出来なかった。
ただ、美咲が好き。
それも伝えられなくて、いったい俺は何がしたくて、どうしたいのかも分からずにいた。
そんな自分が自棄にうっとおしく、過去と同じくらい自分が嫌いだと思った瞬間だった。
そう思えば思うほど、なんで俺は美咲を好きになってしまったんだろう、と不意に思う時がある。
ほんと、なんだよって思う。
絆されるつもりなんかなかったのに…