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美咲が俺の所に居る時間が自棄に増えた。
だからと言って特別な事はなく、ただ美咲の傍に居るだけだった。
だけどその美咲は、ほぼ寝てばかりで。
どれだけ疲れが溜まっていたんだと思うほど、ずっと寝たままだった。
会話しようにも眠りっぱなしの美咲に声を掛けることも出来ず、唯一話すのが俺の昼間の仕事がない時だけで、夕方になると美咲は瞼を落としていた。
そんな日々が続いて一週間。
美咲がいつの間にか自分の家から持ってきた服が溜まっていく。
一緒に居る事を望んでいた俺は、嬉しいと思うはずなのに、何故か心に晴れ間はない。
学校へも行かずほぼ寝ている美咲が自棄に心配になって来た。
そんな事を思いながらスーツに着替えていつも通り店に向かう。
その向かう途中、
「…芹沢さんっ、」
この辺でその名前を呼ぶ事に俺の足はピタっと止まった。
振り返る先に制服を着た葵ちゃんがいる。
軽くお辞儀をした葵ちゃんはゆっくりと足を進めた。
「すみません。呼び止めてしまって」
「いや、いいけど。もしかして、またずっと待ってたの?」
「帰りは分かんないので、始まる時間前に来たら会えるかと思って…」
「そっか」
「ちょっとだけお時間ありますか?」
「うん、いいよ。ここじゃアレだから何処かに入ろう」
「でも、忙しいんじゃ…」
「大丈夫。俺も話したい事あるから」
「分かりました」
軽く微笑んだ俺は足を進め、その後を葵ちゃんは着いて来る。
店から離れた場所にある喫茶店に入り、一番奥の席に座った。