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「なんかあった?ま、なんとなく話の内容は分かるけど」
飲み物を注文をして、口を開いた俺は苦笑いで葵ちゃんを見る。
そんな葵ちゃんは困ったように俺を見つめ返した。
「…美咲はどうしてますか?」
「どうしてますかって、葵ちゃん、美咲と連絡してないの?」
「…してないです」
「なんで?」
「今は美咲とは会えないです」
「だよな。学校行ってねぇもんな」
「いや、そう言うんじゃないんですけど…」
「え?喧嘩でもした?」
「……」
そう言った瞬間、葵ちゃんの瞳が一瞬揺れる。
そして黙る葵ちゃんに俺はフッと頬を緩めた。
「そっか。美咲は元気だよ。ずーっと寝てるけど」
「え?ずーっと寝てるって、美咲…芹沢さんの所にいるんですか?」
「うん、居る。なんか今までの寝不足を解消するかのようにずーっと寝てるよ」
苦笑いになる俺を見て、葵ちゃんも少しだけ安堵の表情を見せ俺に笑みを向けた。
「そうですか。…きっと、居心地がいいんだと思います…」
「居心地?」
「はい。それほど気を休めて寝れるって事はきっと芹沢さんと居ると居心地がいいんだと思います」
「そうかな?美咲は何も言わないからな」
「そうですね…人の心配はするのに自分の事はいつも後回しなんで」
「そうだな」
「美咲が来てない間に進路希望調査が配られたんです。以前、美咲と言い合ってしまったからこのことについて何も聞けなくて」
「……」
「もしかしたら芹沢さん、知ってるのかなって」
俺から徐々に避けて行く葵ちゃんの視線に俺は息を飲んだ。