Domain
「ごめんね。俺もそー言う話いっさい美咲とはしてなくて」
「そうですか…。ごめんなさい、こんな事聞いてしまって」
「葵ちゃんだけじゃなくて俺も心配してるから…美咲の留学の事」
「…あたしは美咲の気持ちを尊重したいって思ってます。でも昔からの夢、なんで壊すんだろうって、」
「一つ聞いてい?」
「はい」
「美咲は何年行こうとしてるの?」
「多分、5年です。昔から5年間は行きたいって言ってましたから」
「…そっか」
「正直、美咲の支えにあたしはなる事が出来なくて。芹沢さんだったらって、」
「…え?何で俺?」
「芹沢さんと出会って美咲は変わったから」
「……」
「今の美咲にとって、芹沢さんの存在が物凄く大きいと思います」
「……」
「気を悪くさせてしまったらゴメンなさい。美咲が留学しない理由は芹沢さんとずっと居たいからだと思います」
頭からその言葉がずっと離れなかった。
葵ちゃんと別れた後も、店に戻った後も、その言葉が自棄に頭に染みついて離れなかった。
帰り際に、美咲には言わないでほしい。会った事も内緒でお願いします。って言ってきた葵ちゃんの顔が浮かぶ。
もし、留学を行かない理由が俺なのであれば、その美咲の意志は俺には賛成できないと思った。
一緒に居たい。
ずっと傍に居たい。
留学に行ってしまうと俺から離れてしまう。
そんな事、分かってた。
だから今まで一度も口にすることはなかった。
だけど、その行かない理由がもし俺であるのであれば…
それに俺は賛成できない。
俺の所為で夢をダメにするのは、違うと思った。
ひたすら考えて俺の中で出た結論が、これで。
美咲の為に何が出来ると考えた時、
俺は諒也にある人の場所を聞き出し、その人の元へ向かった。