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「…ちょっ、ちょっと!!」
背後に美咲の焦った声が飛ぶ。
その声を無視して俺は、バタンとドアを閉めた。
靴を履こうとする俺の視線が不意に止まる。
あぁ…
思い出すかのように俺はポケットに手を突っ込んで、そこから数枚の千円札を取り出した。
どーせアイツもすぐに出てくるだろうと思い、会計機会に金を入れる。
思わず深いため息を吐き出した俺はそのままホテルを後にした。
時間が経つごとに人が溢れ出す繁華街。
賑わうその声も、うっとおしく感じやる気をなくす。
不意に通りかかった高校生の女とオヤジ。
その光景を見てまたため息が漏れた。
別に美咲じゃなくても、そー言う奴はいっぱいいる。
なのになんで俺は美咲だったんだろうか。と頭を過った時、アキの顔が頭に浮かんだ。
あぁ、あいつか。
あの時、アキが俺に美咲の事を言ってこなければ、今はまだ知らないはずなのに。
むしろ、この先もずっと美咲の事を知る事もなかったはず。
何やってんだろ、俺は…