Domain

「やっぱりな」

「……」


クスクス笑う流星から視線を逸らし、灰皿に灰を落とした後、俯いて咥える。


「だったら、そりゃ早く帰るわな」

「別に一緒に住んでるとかじゃねぇから。今は居る。ただそれだけ」

「一緒じゃねぇかよ」

「ちげぇよ。つか、お前。ペラペラ喋んなよ」

「言わねぇわ」

「店の奴には言うなよ」

「言わねぇって。言って広がったらお前の評価落ちんだろ?」

「評価?そもそも俺の評価ってなに?」

「んー…、No1を維持する事」

「評価でもなんでもねぇだろ、それ。…ついでだから言っとくけど、俺5年後ココ辞めると思う」


葵ちゃんから聞いた言葉。

5年間美咲は日本を離れる。

その5年後、俺はここを離れようと思う。

曖昧に、適当に考えたわけではなく、美咲が離れる5年間。

いつかは辞めようと思っていたホスト業界。

その期間だけ頑張って辞めようと思った。


「なんで5年後?その5年ってなに?」


短くなったタバコを消し、ペットボトルを手にした俺は深くソファーに背をつける。

そして一口水を含み、小さくため息を吐いた。


「…留学すんだって」

「へー…、留学ね。なんかスゲーな。で、帰ってくんのが5年って事?」

「そう。だから俺は辞める。どっちみち30までに辞めようと思ってたし、丁度いいかなって」

「それは本気で?」

「嘘言ってどーすんだよ。ちなみに言うけど、同情で好きになったとかじゃねぇから」


流星に言われた言葉。


″同情出来るから一緒に居たいとは違うからな″

″そんな事はただのお互い傷口舐めあってるだけだろーが″

″美咲ちゃんが可哀想なだけ″


何か思う度に頭の中を過ってた言葉。

だから流星にはちゃんと言おうと思ってた。

ちゃんと…

< 344 / 454 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop