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「…そっか。まさかお前の口からそんな言葉聞けるとはな。そこまで言うくらい本気って事?」
フッと鼻で笑った流星はタバコに火を点ける。
「本気…なんかな」
「なにそれ」
「そうなるとは思ってなかったけど…」
「気がついたらいつの間にか…ってやつ?」
「……」
クスリと笑う流星はタバコの煙を勢いよく吐き出し、さらに口を開いた。
「お前、言ってたよな?客とは絶対に付き合わねぇし、この仕事してる間は好きな奴は作らねぇって。なのに…」
「あいつは客じゃねぇけど」
「いや、だからよ。好きな奴も好意寄せる奴も作らねぇって言ってただろ。めんどくさいって、」
「入った頃は言ってたな。なんか、うしろめたさっつーのあんだろ?」
「は?…誰に?」
「誰にっつーか、好きな奴いんのに何でこんな仕事してんだろーとか。なんで好きな奴いんのに他の女と毎回会ってんだろーとか」
自分で言って、何故か馬鹿らしく鼻で笑ってしまった。
俺が、俺じゃないみたいで…
「つか、それお前が言うか?どの口が言ってんだよ」
「いや、まぁそうだけど…ま、あれだよ。お袋亡くなってから気づかされた。大事にしとけばよかったなーって、今でも思う」
「まー…あれだな、過去の重みっつーやつな」
「で、当時、沙世さんにすげー怒られてさ、多分人生の中で一番怒鳴られた」
思い出すかのように俺は悲しそうに笑った。
絶対忘れる事のない記憶。
俺の事を思って怒ってくれた事で気づかされた。