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「で?産むのかよ」
「そのつもり」
「…そっか」
「あれ?反対しないの?」
「反対?」
「友達はみんな反対した。おろせって、散々言われたから」
「だって、もし俺がおろせって言ってもお前おろさねーだろ?」
「…うん」
ミカは寂しそうに笑みを漏らし、そっとお腹に触れた。
「と、言うか。そんな簡単に決められる事でもないし、俺が決める事でもない」
「…だよね」
「それがお前が出した答えだろ。大切にしろよ、その子」
「うん。ほんとはね、その後に彼も言ってくれたの。夫婦関係は昔から破断してて離婚するから結婚しよって。それにあたしは賛成できなかった」
「……」
「だから、ごめんなさいって、こっちから願い下げちゃった」
「そっか。…で?これからどーすんの?一人で育てる気?」
「田舎に帰ろうと思って。パパは猛反対だったけど、ママは受け入れてくれた」
「そっか」
「だから楓とは今日で最後かな。寂しいでしょ?」
いつもみたいにニコッと笑うミカに俺はフッ頬を緩める。
「寂しくねぇわ」
「言うと思ったぁー…」
「嘘。寂しいよ、そう言われるとな。まー…元気で頑張れよ」
「うん。ありがと。楓も頑張ってよ。NO1から落ちないで。応援してる」
「さぁ、それは分かんねーけど」
苦笑いする俺にミカは頬を緩める。
「楓は優しいね。あたしは店での楓はあまり知らないけど、みんな優しいって言ってる」
「店だけな。俺、店から外れると冷たい男だし」
「まぁ、冷たい時もあるけど基本優しいよ」
「もし俺が女だったらこんな男ぜってぇに嫌って思う。面倒くせーな俺。って、最近よく思う」
「何それ。病んでるの?」
「病んでねぇよ」
クスクス笑うミカに俺は頬を緩める。
暫くして外に出てタクシーを拾い、それに俺とミカは乗り込んだ。