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その所為か、少しだけ目が覚めた様に感じる。
別に俺は一緒でもいいけど。なんて思いながらソファーに座り、タバコの先端から今にも落ちそうな灰を灰皿に捨てる。
口から吐き出した煙をボンヤリと見つめながら、美咲の事を考えてしまった。
居なくなってしまう美咲の事が頭から離れなかった。
気持ちを切り替えるように短くなったタバコをすり潰し、もう一本に火を点ける。
とくに見たいわけでもないが、テレビをつけ俺はボンヤリと視線を送った。
どれくらい経ったか分からない時。
リビングに入って来た美咲に視線を送った。
「おー、浸かった?」
「ううん」
「浸かれよ」
「うーん…」
よく分かんねぇ返事をした美咲は冷蔵庫に向かう。
「入るわ」
通りすがりに声を掛けると、コップに注いだ水を口に含みながら美咲はコクリと頷いた。
未だボンヤリとする頭。
湯船に深く浸かりながら天井を見上げ軽く目を閉じた。
こんなに美咲と会話をしたのはいつぶりだろうと思った。
もう一緒に居て結構な期間が経つにも係わらず、ちゃんとした会話など全くなかった。
ほぼ眠りについていた美咲と顔を合わせる事も殆どなく時間だけが過ぎて行った日々。
その期間、美咲はどれだけ悩みに悩んだのだろうか。
″アイツ泣いてた″
諒也が言った言葉が頭を過る。
何の涙だよ、マジで。
あん時もそうだった。
寝落ちしたまま涙を流してた美咲の姿が目に浮かぶ。
美咲と一緒に居たい気持ちと、留学を応援してやりたい気持ちが嫌なぐらい交差していた。