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「返さなくていいって言ったろ?俺は返してほしいなんて一言も言ってねぇし、みぃちゃんがそう思ってる気持ちだけで十分。俺が勝手にやってる事だし、それを素直にみいちゃんは受け取ればいい。…な?」
そして俺の傍に居てくれたらそれだけで十分。
美咲に触れたいと思った。
無意識に俺の手が美咲の頭に触れる。
優しく、何度も撫ぜるその行為から、「ごめ…」美咲の小さな震えた声がポツリと落ちた。
泣いてんのか?
震えた声がそう思わせた。
だけど、それを敢えて俺は何も聞かず美咲の背後から抱きしめる。
このままずっと居たいとそう思う。
ここまで本気で好きになるとは自分でも思わなかった。
正直、自分自身に驚いているのと、なんで美咲を好きになったんだろうと思う気持ち。
考えても答えなんて見つからず、ただ美咲を好きになっていた。
気付けば、美咲の傍に居たいと思っていた。
そして俺の傍にも居てほしいと。
だけど。
「待ってる。みいちゃんが帰って来るまで待ってっから。…だから行って来い」
言えるのはその言葉だけだった。
やっぱり涙を流したのだろう。
数回美咲の手が目元を拭う。
「…忘れないでね。あたしの事」
「忘れる訳ねぇじゃん」
そんな簡単にお前の事、忘れられねぇし…
「もし誰かと付き合ってたら言ってね。隠されると辛いもんがあるから」
って、なんで俺が誰かと付き合う限定なんだよ。
「誰とも付き合わねぇって」
「分かんないよ。心変わりってもんがあるから」
「だから言ったろ?心変わりはしねぇって。もし、みぃちゃんが俺の事忘れてたら奪いに行くからって言ったろ」
言った傍から思った。
初めて言った言葉に思わず笑みが漏れる。
俺が俺じゃないみたいに、美咲と居ると次々に初めての言葉が溢れ出す。
どうか、してんな俺。