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夢中になりすぎてしまった。
好きと言う一時の感情が俺に止める権利など与えないくらい、ただ美咲に溺れ無意識のうちに美咲の服の下から手を滑り込まし肌に触れた。
「ちょ、ま、待って…」
暫くして美咲の焦った声と俺を引き離そうとする美咲の力あまりにも強く、その所為で俺の意識が舞い戻る。
繋がった唇さえも引き裂かれ、真下にいる美咲は目を泳がしながら不安な表情を見せた。
「ごめ…」
思わず呟いた小さな声。
何やってんだ、俺は。そう思うと同時に小さくため息を吐きだし美咲から距離を置く。
一旦深呼吸をし胡坐を掻いて座り直し、俺は理性を取り戻そうと髪を乱暴にかき乱しもう一度、ため息を吐き捨てた。
「ちが…違うの」
「いや、俺が悪い」
ただ勢いに乗って流れてしまった事。
離れたくないと思った感情がエスカレートしてしまった所為。
「だ、だからそうじゃないの」
焦って口を開く美咲に少しだけ視線を送る。
不安そうに目を泳がし、戸惑うように表情を顰める美咲。
「そうじゃないって?」
「…っと、何て言うか…その、えっと…だから――…」
「どした?」
「うん…」
表情を崩して戸惑う美咲は何度も手を額にあてる。
その混乱している美咲に俺は顔を顰め、美咲を見つめた。
「みぃちゃん?」
俺の顔を見ないように美咲は視線を外し、そして深呼吸しながら俯く。
何に戸惑っているのか美咲は時折、首を傾げ額に手を当てる。
そして。
「ごめ…。汚いから…あたし」
零れ落ちたその言葉に、思わず聞こえないくらいのため息を吐き捨てた。