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「は?なに…言ってんの?」
まじで。
意味わかんねぇし。
「なぁ?」
もう一度吐き出した言葉とともに思わず俺は美咲の肩を軽く揺すった。
その所為で美咲の閉じていた瞼がゆっくりと開く。
「だ、だから――…」
「そうじゃねぇって。俺がいつそんな事言った?つか、俺…みぃちゃんをそんな風に思った事一度もねぇんだけど」
「……」
そんな事思った事は一度もなかった。
やめろ。とは言ったものの軽蔑するような目では見てなかった。
だって、結局は俺もそんな生き方だったし。
俺も同じ。
「つか、もしかしてそれで俺から避けようとしてたのか?」
「……」
「…だとしたら俺は…すげぇ辛い」
もしもそうだとしたら。
もしも美咲がそんな風に思っていたならば、心が重い。
思わず目を閉じ無意識に出てしまったため息が周りの空気を濁す。
「ごめ…」
小さく呟かれた謝罪の言葉に俺は閉じていた瞼をゆっくり開けた。
「謝る意味が分かんねぇ」
「あたしの…所為で」
また、なんなのコイツ。
なんで俺は美咲に謝られてる?
あたしの所為って、なんだよ。
「何がみぃちゃんの所為なのかも分かんねぇ」
「……」
「ってか、そんな風に思ってたら初めからみぃちゃんの事なんか好きになってねぇよ。…何も思わねぇよ」
俺には分からなかった自分の感情を引き出してくれたのは美咲だから。
俺の穴の開いた心に美咲が入ってくれればいい。
そして美咲の空間に俺を入れろよ。
グッと抱きしめた美咲の身体が俺の身体にスッポリと埋まる。
ただ、この好きと言う感情をもう離したくはなかった。