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「なんでまた謝んの?」


未だに顔を両手で覆っている美咲はさっきよりも鼻を啜る音が大きくなる。

その手に触れたいけど…


「ごめ…。翔の事好きなの。でも、だけど…ごめ…」


ごめんって、何が?

なにがごめんな訳?


「…みぃちゃん?」

「ごめん。…あた、あたし…何も感じないの」

「…え?感じないって?」


…なにが?

一瞬、美咲は何を言ってるんだろうと思った。

俯く美咲は未だに顔を隠し、そして泣いているのか時折、肩が震えるのが分かる。

その美咲の姿をただぼんやり見ていると、思わず心の中で〈あぁ、なるほど〉って呟いてしまった。

多分、美咲が感じないと言ったのは俺が触れた事であって、きっとその事に関してだろう。


と思った時、


「…そう言うのしても何も感じないの」


小さな声で美咲が口を開いた。

そう言う事って…


「…不感症ってやつ?」


心の声が漏れてしまっていた。


「分かんないけど…多分」


その言葉に返してくれる美咲に俺は無意識のうちにため息を吐き捨てていた。

いや、そのガッカリとかのため息じゃなく、つい口から零れてしまった俺の声で無意識にため息を吐きだしてしまったわけであって決して美咲が嫌だからとかではない。

むしろ不感症で感じないとかじゃなく、そう言うのを仕方なくでしていたからなんじゃねぇのか?なんて思った。

俺も実際そうだったから。

ま、俺と比べても仕方ねぇんだけど、女に求められるとそれに応じ、女が満足してりゃそれで良かったから。
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