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寂しさの闇
ここ数日、ギリギリまで寝る所為で店に着くのは、ほんとに開店前になっていた。
朝の仕事を真面目に行き帰ってきてからの、ほんの数時間で夜の仕事。
その数時間の間を爆睡してるのかギリギリまで目が覚めることはない。
だけど、身体は思ってるほど疲れてはいなかった。
もうすぐで店って所で俺の足が必然的に止まる。
数メートル離れたその先に見えたものに、息を飲みこんだ。
何してんだよ、あいつ。
もう会うこともねぇって思ってた美咲が何故か店の前の石段に座っている。
その距離を縮めようと再び俺は足を動かした。
避けるにも避けられない。
ここを通らない限り店には入れねぇ。
しかも今日に限って遅刻だから早く行かねぇと行けねぇのに。
この前の出来事が頭の中を過り一息吐く。
そしてその出来事すらをなかったかのようにと、俺は美咲の前に立った。
「あれ、みぃちゃん?」
顰めた顔から笑みを作り平然を装って言葉を吐き出した俺に、
「うわっ、」
「あっ、やっぱみぃちゃんだ」
しゃがみ込んだ俺に驚いた表情を出した美咲に思わず笑みが漏れる。
「み…、みぃちゃん?」
そう呼ばれた事に戸惑ったのか、美咲は少し目を泳がせ、俺はコクリと頷いた。
「美咲だから、みぃちゃんね。子猫みたいで可愛いっしょ?」
普通にしてっと可愛いんだけど。ってか、こいつには綺麗のほうがあってんな。
まぁ猫みたいっつーのは、あながち間違ってはいねーけど。
そう思うと余計に笑みが漏れた。