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「お金、必要だから…」
落ちた視線が瞬時に上がったのは言うまでもなく、その言葉で俺の表情が崩れる。
つか、何でそんなに金に逢着してんだよ。
確かに俺もそうだったけど。
稼ぐ道をお前は間違ってる。
まぁ、世間からすりゃあ俺のホストっつーのも認められない部類に当たるかも知れねぇけど、それ以前にお前のしてる事の方が自分を壊してる。
「あたしの事は――…」
「ほっといて…、だろ?」
「……」
もうその先の言葉なんて分かる。
聞かなくても、分かる。
「みぃちゃんの言う事ぐらい分かる。ほっといて、関係ない、突き放す言葉しか言えねぇのかよ」
…やめろ。
付け加えるようにして呟いた言葉は決して嘘じゃない。
美咲は膝を抱えたたまま顔を埋め、うずくまる。
その頭を撫ぜてやる事くらい簡単に出来る。
だからって、撫ぜた所でどうなる事もない。
むしろ、そんな事、俺には出来なかった。
他の女に出来ることが、美咲には出来ない。
そんな美咲から離れ、俺はもう一度ベランダに出てタバコを咥えた。