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今、唯一紛らわせてくれるのはタバコか酒しかなくて、手に持っているビールで喉を潤しタバコを再び咥える。

こんな時、いつもの俺だったらどうしてたっけ?と頭を悩ますも、何もその先の事なんか思い浮かばずため息とともに消える。

女の扱いに慣れてるとは言え、状況が違う。


つか、マジでこんな話する為に連れて来たんじゃない。

こいつの崩れそうな顔を見に連れて来たんじゃない。


飲み切った空き缶の中にタバコの吸い殻をポトンと落とす。

一息吐いて戻ると、美咲はその場で横たわっていた。


近づいてその場に座る俺は、美咲の肩にそっと触れる。


「みぃちゃん、ここじゃあれだからベッドで――…」

「助けて…」


軽く揺すった手が必然的に止まった。

小さく呟かれたその悲痛な言葉とともに頬を伝っていく涙。

無意識に呟いたんだろうか。

涙を流しながら眠りに落ちる美咲に、


「お前、何抱えてんの?」


頬に伝う涙をそっと拭った。


そんな眠ってる美咲にだから出来ること。

頭を数回撫で頬に触れる。


冷たくなった頬。華奢で壊れそうな身体をグッと抱え上げ、俺は寝室へと運んだ。

ベッドに寝かせた美咲の横で腰を下ろす。


眠ったままどんだけ泣いてんだよと思うほど、閉じられた目尻には滴が光る。


″助けて…″そう言った美咲の言葉が頭から離れず、俺は結局2時間くらいしか寝付くことが出来なかった。
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