Domain
だからって、返信すら面倒だった。
むしろそんな時間すらない。
どうにかなんだろ。と言う簡単な答え。
そんな事を考えてると、時間が刻々と過ぎていき、現場に出向かう時間が迫ってくる。
朝の仕事は髪なんてどーでもいい。
時計をする事も香水を吹きかける事もない。
タバコと携帯。そして財布があったらそれだけでいい。
だから敢えて物凄く楽だと感じる。
着飾る事もなく、言葉を選ばなくてもいい。
素を出せる自分の中のもう一人。
作業着を取りに行こうと、美咲の寝ている寝室へ再び入る。
静かにクローゼットを開け、そこから作業着を取り出す。
そして寝室を出ようとした俺の足が不意に止まった。
まだ眠り続けてる美咲に視線が行き、気が付けば足が美咲へと向かう。
″助けて…″
そう呟いた言葉が未だ頭から離れず心までもがモヤモヤする。
端の方に座ると微かにベッドが揺れ、美咲の顏に掛かった微かな髪を俺は指で払った。
そしてそのまま頬に指を滑らす。
どれくらい流したのかも分かんねぇ涙痕。
「…俺が助けるから」
何を根拠にそんな事を呟いたのかも分かんなかった。
気づけば勝手に口が開いてて、自分にでも正直驚く。
好きでもない。恋愛感情すら何もない。
だけど、この時。
見放すわけにもいかないと、そう思ってしまった。