Domain
寝室を出て着替えた後、テーブルの上にパンと飲み物を置き、そしてその横に鍵を置いた。
そのまま玄関に向かっていく俺の足が、ふと止まりもう一度リビングへと進む。
紙とペンを持って、その真っ白な紙に俺の携帯番号を刻み、もう一枚の紙にタクシーの番号を書く。
掛けてくるかどうかなんて分かんないけど、とりあえず。
そしてもう一度、玄関に向かい、その下駄箱の上に一万円札とタクシーの番号を置いてマンションを出た。
車で目的地まで着き、現場まで足を進めると、目に移ったものに呆れのため息が出た。
「おい、」
ベンチで寝そべってるタケルの額を突くと、「うーん…」と眠そうな声でタケルが目を開ける。
「お前、何寝てんだよ」
「眠いんすよ」
「は?つか俺の方が眠いっつーの」
2時間しか寝てねーんだから。とは言わず顔を顰めた。
「見た目、眠そうじゃないっすよ」
「見た目で決めんなよ。お前の場合は夜遊びだろ?」
タケルは欠伸をしながら髪を乱暴に掻き上げ、目を細めて俺を見た。
「昨日は遊んでないっす。…翔さん、俺…死ぬかもしれないっす」
「は?お前、どっか悪いの?」
「飯、食ってなくて…だから仕事出来ないっす」
野垂れ死にみてーにタケルは俺の腕を軽く引っ張って身体を起す。
そのまま萎れるように項垂れた。