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「は?んだよ、それ。じゃあ食えよ」
「金ないんすよ…」
「はっ?お前、どんだけ使ってんだよ」
「蓮斗さんと勢い乗ってパチンコに…」
「馬鹿じゃねーの?蓮斗と行くからそんな事になんだよ」
「だから今日は翔さんの言う事聞くんで一日限定の彼女に――…」
「あー、もう!分かったから腕引っ張んなよ、昼飯奢ってやるから」
「マジっすか!?」
さっきとは打って変わって表情を変えるタケルは俺の腕をあっさり離す。
そんなタケルにため息が漏れた。
「つかお前の事は本当か嘘か分かんねーわ」
「えーっと、」
そう言いながらタケルはポケットから財布を取り出し、そこから小銭を取り出す。
「ただいま156円っす」
手の平に156円を乗せて、俺の目の前にかざす。
「お前、マジでそんだけしかねーの?」
「そうっす。あ、家に帰ったら千円はあるかも」
「ある意味すげーな、お前…」
「凄いっしょ?」
「褒めてねーよ。で、金は入るまでどーすんだよ」
「だから翔さんの彼女に…」
「はぁ!?俺、お前の保護者でも彼氏でもねぇぞ」
「うーん…親方に言って前借っすかね」
へへっと笑うタケルは別に困った様子でもなく、その顔にまたため息が漏れた。